
坂の上ファミリークリニックでは、訪問診療を始める方法として「アセスメント訪問(事前訪問)」を行っています。
以前は、患者さまやご家族がクリニックの外来までお越しいただき、面談を行ったうえで訪問診療を開始していました。しかし、ご高齢の方やご家族にとってその移動が大きな負担となる場合も多く、生活の実際の様子を十分に把握しづらい課題がありました。
その課題をきっかけに、坂の上ではご自宅に伺う「アセスメント訪問」を導入。
生活の現場から患者さまを理解するための、最初の一歩となっています。
今回は、このアセスメント訪問を担当する坂の上ファミリークリニック地域連携室・山本亜弓さんに訪問の流れや進め方、現場で感じることなどを伺いました。

1.アセスメント訪問とは
2.アセスメント訪問の対象
3.外来面談との違い
4.アセスメント訪問で確認すること
5.アセスメント訪問導入の反響
6.訪問中に意識していること
7.印象的なアセスメント訪問
8.アセスメント訪問の費用と申込方法
9.今後の発展について
10.読者の皆さんへ
11.まとめ
山本:患者さまのお家や入院している病院に当院の地域連携室の看護師がお伺いさせていただいて、訪問診療がどんなものかのお話やお身体の状態の観察、契約の手続きなどをします。

山本:基本的には訪問診療を受けられる皆さんが対象となっております。
山本:看護師が生活面やご自宅の様子も含めてアセスメントの方をさせていただいているので、情報が濃いような気はしています。家の様子やリラックスしたいつものその方が見えるので、患者さまを”捉える”っていうようなところでは外来面談よりいいのかなって思いますね。
山本:そうですね。まずは希望を確認しようかなと思っていて、「家でどんなことをしたいから家に過ごしたいのかな」とか、「なんで訪問診療を始めたのかな」っていうところのこれまでの経緯だったりっていうところも理解することで、その方への理解が早くなるような気もしているし、その方の希望に合わせられるかなと思っているので。
あとは逆に先生に聞きにくいだろうなっていうようなこともあるかなと思うので、「本当はどう思ってるの?」とか、病気のことも「どういう風に受け止めてるの?」っていうようなことも確認できるともっといいかなと思ってはいます。
山本:そうですね。基本的にアセスメント訪問を押し売りはしてなくってこういう選択肢がある中でどうするのがいいかねみたいな話を最初はさせてもらってたんですけど、今はもう「アセスメント訪問でお願いします!」っていうようなお電話がいただけることも多くなって。なのでそれだけ浸透はしているんだろうなとは思います。
大杉:ご家族からお電話が来るんですか?
山本:病院からですね。退院支援の方はこの患者さんの場合は早い方がいいからカンファをして、先生の日程を合わせてっていうより、「本人に会って今の状況を見てほしい」っていうような希望が増えてきていますね。
あとは地域包括の方からもなかなか医療資源につながらない方の紹介もありますね。例えば、外来に行くことが大変な方や交通費が払えない方、精神的になかなか外に出れない方など、いろんな問題をはらんでいる方々がいらっしゃって、そうすると地域包括の方から「来てほしいよ」って。
逆に言うとこれだけ(在宅医療に)繋がらない人がいたのかなって思うとちょっと怖くなりました。
山本:意識していること…そうですね。この方にとってどの状況にしてあげるのが一番いいのかなっていうのを常には考えて行動はしようと思っています。状況が悪ければ早めに先生に電話したり、その方のご希望を先に確認して先生に繋げたり…。
アセスメント訪問を導入してからは特に「今何ができるのかな」とか、ちょっと先を見て今やれることの最大限をやれるようにしています。
大杉:スピーディーに柔軟に対応されているんですね。
山本:そうですね、もう聞いちゃったら心配になっちゃうんで(笑)
10月中旬くらいにカンファで伺った方も「11月ぐらいでいいよね」みたいな雰囲気だったんですけど、がんの末期の方で、退院するのにこれ以上いい日はもう来ないと思ったので「早くにしましょう」って言って、ちょっと早めてもらったケースもあります。
なるべくこの方が一番いい形で希望するところに行かせてあげたいなっていうところも意識はしてますね。

山本:独居の方でデイサービスまで私が行って、アセスメント訪問して契約してあとは訪問診療の先生に…って繋いだ時は「行く場所はどこでもいいんだな」っていうのを改めて感じたというか。
本当は自宅が一番様子が分かるからいいとは思うんですけど、そういうケースでも訪問診療に繋がってよかったなっていう意味で印象的でした。
あとは家で過ごす期間が短い方が本当に多く、「このタイミング逃してたらお家に帰れなかったな」っていう方の連続なのでドキドキしてます。振り返るときにいつも「本当にこの方法で良かったのかな」とか日々考えています。
私たちは早くお家に帰してあげたいけど、私たちだけの気持ちじゃなくて患者さんの気持ちだったり、ご家族の気持ちが揃わないと意味がないので、「今が一番いいんだよ」っていうようなことを伝えながらご希望をお聞きしていますね。
山本:費用はいただいてないです。申し込み方法は坂の上ファミリークリニックの地域連携室(053-416-2164)にご連絡をお願いします。
山本:訪問診療自体があまり知られてないなっていうところも実感としてはあって、実際どういうことしてくれるのとか、あとは実際、訪問診療っていう仕組みは知ってるけど、実際に患者さんのところに行って何をするか分からないとか訪問頻度を知られてなかったりとかっていうのはまだまだあるなってすごく思っているので、このアセスメント訪問を機にもっと在宅医療自体がみんなの選択肢の 1つになっていけるといいなと思います。
大杉:在宅医療のハードルを下げたいですね
山本:そうですね、ハードルが下がって「まあ 1回聞いてみるだけ聞いてみようか」っていう方が増えてくれて、”自宅に帰りたい方”とうまく結びつけられたらすごくいいのかなっていうのは思っています。
「この患者さんは処置が多いから、多分無理」とか、それを退院支援の方が例えば思っちゃってたら、その人が帰りたいって言った言葉はそこで終わっちゃう。だから、そういう方がいるんだけどどう?って気軽に相談してもらいたいですね。
大杉:そうですね。私も病院とかに行ってると「(退院先の)選択肢の1つになりづらい」って実際に言われたことがあって…。でも患者さんは本当のところは家で過ごしたいと思ってる、って言われたことがありました。
「在宅医療はハードルが高い」ということを一般の方も病院の方も思ってるんだなってすごい思って。
山本:私たちも交流会や研修会をもっと開催して、在宅医療を身近に感じてもらえる取り組みもしていきたいですね。アセスメント訪問ももっと浸透させつつ、在宅医療受けたいけどどうしよう…って悩んでいる方がいたらその方の背中を優しく押してあげられるようになりたいですね。

山本:一番言いたいのは”在宅いいよ”っていうことですね。働く立場としての私も在宅医療に携わっててすごい救われたし、看護師として毎日大変ですけど、その方の大事な時間に深く携われるから私は在宅医療が好きです。
医療関係者の方や患者さまで、自宅に帰りたいって気持ちがあって在宅医療のことでわからないことがあれば、気軽に身近な病院や診療所に聞いていただいて…。それが私たちであればとても嬉しいけどですね。
数ある選択肢の中から在宅医療を選んで頂けたのなら、私たちは全力で答えたいなって思っています。
大杉:山本さんの在宅医療に対する熱い想いが伝わってきました。アセスメント訪問を通じて在宅医療が皆さんの選択肢の1つになっていけるといいですね。今日はインタビューを受けていただいてありがとうございました。
今回の記事では、訪問診療を始める前に看護師がご自宅や入院先に伺う「アセスメント訪問」について紹介しました。
アセスメント訪問では、生活環境や病状、ご希望を実際の場で確認できるため、外来面談よりも在宅移行の判断や準備がスムーズになります。費用もかからず、地域連携室へご連絡いただくだけで利用できるシンプルな仕組みです。
今後も患者さまが望む場所で生活できるよう、最適な形で在宅医療へつなぐサポートを今後も続けてまいりたいと思います!
以上、坂の上通信でした。